
歩くだけで、現場が三次元になる。
GNSSの届かない屋内・地下・トンネル・森林でも、据え付けなしで周囲の点群を連続取得。取扱全8機種を精度・重量・価格帯・用途で横断比較し、現場条件に合う1台を選べるようにします。
ハンドヘルドSLAMスキャナーとは、SLAM技術により自己位置推定と3D点群取得を同時に行う手持ち型のLiDAR計測機器で、GNSS(GPS)が届かない屋内・地下・トンネル・森林でも、歩くだけで周囲の三次元点群データを取得できます。相対精度2cm前後・計測速度30万〜60万点/秒が現行機の標準的な性能です。
「ハンディSLAM」「手持ちLiDARスキャナー」「携帯型3Dレーザースキャナー」「モバイルSLAMスキャナー」はいずれも同じ機器カテゴリを指す呼称です。本記事では、LiDAR/SLAM計測の専門商社であるAPEX株式会社が、取扱全8機種(SLAM100/SLAM200/SLAM200E/SLAM2000/LiGrip SE/LiGrip O2シリーズ/LS600/Pocket 3D)を精度・重量・価格帯・用途の横断比較で解説し、現場条件に合った1台を選べるようにします。
ハンドヘルドSLAMスキャナーとは?

ハンドヘルドSLAMスキャナーは、レーザースキャナ(LiDAR)・IMU(慣性計測装置)・カメラを一体化した手持ち型の三次元計測機器です。従来の地上型レーザースキャナー(TLS)のような据え付け・整準作業が不要で、電源を入れて現場を歩くだけで、周囲360°の点群データを連続取得できます。
最大の特徴は、GNSS(GPS)信号に依存しないことです。SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定と地図作成の同時実行)アルゴリズムが、センサーデータから機器自身の位置と軌跡をリアルタイムに推定するため、衛星信号が届かない屋内・地下街・トンネル・ビルの谷間・鬱閉した森林でも計測が成立します。ドローンのような飛行申請も不要です。
取得した点群は .las / .laz / .pts などの標準フォーマットで出力でき、CAD・BIM/CIMソフトや点群処理ソフトでそのまま活用できます。
SLAMの仕組み|なぜGPSなしで計測できるのか

SLAMは「LiDARで周囲の形状を測りながら、その形状の変化から自分の移動量を逆算する」技術です。構成要素は次の3つです。
LiDAR(レーザースキャナ)
毎秒数十万点のレーザー照射で周囲の距離を計測し、環境の3次元形状を取得します。現行のハンドヘルド機は毎秒32万〜64万点、計測距離100〜120mが標準的なスペックです。
IMU(慣性計測装置)
加速度と角速度を高頻度で計測し、機器の姿勢・移動の変化を捉えます。LiDARの計測フレーム間を補間し、歩行時の揺れを補正する役割を担います。
閉ループ補正(ループクロージャ)
SLAMは移動距離に比例して微小な誤差が蓄積します。計測経路を一巡して開始地点付近へ戻る「ループ」を組むと、アルゴリズムが同一地点の再観測を検出して軌跡全体の歪みを自動補正します。これが精度確保の基本テクニックです。
RTK/PPK連携による絶対座標化
SLAM単体の点群は相対座標ですが、GNSSモジュール内蔵機(LiGrip O2シリーズ、LS600、SLAM200など)ではRTKやPPK処理と組み合わせることで、公共座標系に載った絶対座標付き点群を直接取得できます。屋外測量業務ではこの連携が実務上の決め手になります。
地上型レーザー(TLS)・ドローンLiDARとの違い

結論:狭所・屋内・地下を含む中規模現場はハンドヘルドSLAM、ミリ単位の精度が必要な計測はTLS、広域はドローンLiDARが適します。3方式の使い分けは次の通りです。
| 比較項目 | ハンドヘルドSLAM | 地上型レーザー(TLS) | ドローンLiDAR |
|---|---|---|---|
| 精度の目安 | 相対2〜3cm | ミリ〜数mm級 | 5〜10cm級 |
| 計測速度 | ◎ 歩くだけ・据付不要 | △ 据付・盛替えが必要 | ◎ 広域を短時間で取得 |
| GNSS(GPS) | 不要(屋内・地下可) | 不要 | 必要 |
| 飛行申請 | 不要 | 不要 | 必要(場所による) |
| 得意な環境 | 屋内・トンネル・森林・狭所・複雑地形 | 高精度が必要な構造物・出来形 | 広域地形・法面・災害現場 |
| 価格帯 | エントリー〜ハイエンド | ミドル〜ハイエンド | ハイエンド |
実務では「ドローンLiDARで広域を取得し、上空から死角になる橋梁下・屋内・植生下をハンドヘルドSLAMで補完する」というハイブリッド運用が増えています。両データは点群処理ソフト上で合成可能です。
ハンドヘルドSLAMスキャナーの選び方|5つの判断基準
基準1: 精度(相対精度と絶対精度を分けて見る)
カタログの「精度」は相対精度と絶対精度を区別して確認してください。相対精度は点群内部の形状再現性(現行機で2〜3cm)、絶対精度は公共座標系に対する位置精度(RTK連携時3〜5cm程度)です。出来形管理や公共測量では絶対精度が、形状把握やBIMモデリングでは相対精度が効きます。
基準2: 計測範囲と点密度(点数/秒)
計測距離が長いほど広い空間を少ない歩行でカバーでき、点数/秒が多いほど短時間で高密度の点群が得られます。トンネル・プラントなど大空間は長距離・高密度機(SLAM200:64万点/秒クラス)、室内・狭所中心なら32万点/秒クラスで十分です。
基準3: 重量と稼働時間
1日中持ち歩く機器なので重量は疲労に直結します。軽量クラスは850g(SLAM200E)〜1.3kg(LiGrip O2 Lite)、標準クラスで1.6kg前後です。バッテリー連続稼働は2〜2.5時間が標準で、交換式バッテリー対応なら実質的に終日運用できます。
基準4: RTK/GNSS連携の要否
屋外で公共座標系の成果品(数値地形図・出来形帳票)を納品する業務ならGNSS内蔵機を選んでください。屋内・形状把握が中心ならGNSS非依存のシンプルな機種で足ります。
基準5: 後処理ソフトと出力形式
点群の品質は後処理ソフトで決まります。各機種に専用ソフト(SLAM GO POST Pro、LiDAR360 MLSなど)が付属・対応しており、ノイズ除去・カラーリング・座標変換までワンストップで処理できるかを確認してください。.las/.laz出力対応であれば主要CAD・点群ソフトとの互換性は確保できます。
全8機種スペック比較表【2026年版】

APEX株式会社が取り扱うハンドヘルドSLAMスキャナー全8機種の横断比較です。価格帯はエントリー(安価)/ミドルレンジ(中価格帯)/ハイエンド(高価格帯)の3クラスで表記しています(実勢価格・お見積りはお問い合わせください)。
Pocket 3D700g / 3DGS対応製品ページ →- 画像準備中LiGrip SE1.33kg / RTK版あり製品ページ →
SLAM200E850g / 最軽量クラス製品ページ →
SLAM1001,588g / 汎用第一候補製品ページ →
LS600RTK GNSS内蔵製品ページ →
SLAM20064万点/秒 / 多用途製品ページ →
LiGrip O21台4役 / 3DGS対応製品ページ →
LiGrip O2 Lite1.3kg / IP64製品ページ →
SLAM2000後処理1cm級製品ページ →
| 機種 | 相対精度 | 計測速度 | 重量 | 稼働時間 | RTK/GNSS | 価格帯 | 特徴・推奨用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
Pocket 3D |
—(3DGSモデリング用途) | ※要確認 | 700g(カメラ除く) | 最大3時間 | — | エントリー | DJI Osmo 360/Insta360と組み合わせる3DGS対応入門機。計測距離最大100m、動作温度-20〜+50℃。点群・メッシュ・BIM・フォトリアル3DGSモデルを出力。デジタルツイン・空間アーカイブの最速導入ルート |
LiGrip SE |
2cm未満(絶対5cm未満) | 20万点/秒 | 約1.33kg | 約2時間(デュアルで4時間) | RTKモジュール搭載版あり(SE RTK) | エントリー | Livox Mid-360搭載、計測距離70m。デュアル12MP魚眼カメラで3DGS対応、IP54。測量グレードSLAMを最小コストで導入できるGVIの普及機 |
SLAM200E |
±3cm(実測誤差) | ※要確認 | 850g | 120分/本(×2本) | — | エントリー | 最軽量・片手長時間運用。屋内・地下・崩落現場の機動計測、BIM/CIM入門に |
SLAM100 |
2cm(絶対5cm) | 32万点/秒 | 1,588g | 2.5時間 | 連携対応(CORS/PPK/RTK) | エントリー〜ミドルレンジ | Hesai XT32搭載の定番機。視野角270°×360°、ドローン搭載対応。建設・測量の汎用第一候補 |
LS600 |
※要確認(従来比精度60%向上) | ※要確認 | ※要確認 | ※要確認 | RTK GNSS内蔵 | ミドルレンジ | GNSS+LiDAR+IMU+V-SLAMの4センサー統合。16MPデュアルカメラ。屋外SLAM測量・出来形管理に |
SLAM200 |
※要確認 | 64万点/秒 | ※要確認 | ※要確認 | GNSS内蔵(CORS接続) | ミドルレンジ | デュアル12MP魚眼カメラ。ハンドヘルド/バックパック/車載/ドローンのマルチプラットフォーム対応 |
LiGrip O2 | ≤2cm(スキャン精度) | 20万点/秒 | ※要確認 | ※要確認 | GNSSアンテナ内蔵 | ミドルレンジ | MLF-SLAM(LiDAR+パノラマカメラ3台+V-SLAMカメラ2台+GNSS)。手持ち/バックパック/車載/ドローンの1台4役。12MP×3で360°カラー点群・3DGS対応。トンネル・橋梁下・海岸線などロストしやすい環境に強い |
LiGrip O2 Lite |
RTK絶対精度 最大3cm | ※要確認 | 約1.3kg | 約2時間(交換式) | グローバルRTK+4G内蔵 | ミドルレンジ〜ハイエンド | MLF-SLAM(RTK・PPK・SLAM統合)。3DGS対応。現場即応性と絶対座標取得の両立。上位機LiGrip O2もラインナップ |
SLAM2000 |
※要確認 | ※要確認 | ※要確認 | ※要確認 | 対応 | ハイエンド | 12MP・210°広視野カメラで測量・マッピング特化。鮮明なカラー点群。長距離・大規模現場向けフラッグシップ |
迷ったら:初導入・汎用ならSLAM100、最小コストで測量グレードを試すならLiGrip SE、軽さ最優先ならSLAM200E、3DGS・デジタルツイン入門ならPocket 3D、屋外測量成果品が主目的ならLS600またはLiGrip O2 Lite、大規模・最高品質ならSLAM2000が起点になります。
用途別おすすめ機種

トンネル・地下空間の三次元計測
GNSSが完全に届かない環境こそハンドヘルドSLAMの独壇場です。閉ループを組みやすい線状空間はSLAMと相性が良く、覆工面の変状把握・内空断面の取得に使えます。長大トンネルは長距離・高密度のSLAM200/SLAM2000、中小規模や点検の機動性重視ならSLAM200Eが適します。
森林・林業調査
上空が鬱閉しドローンLiDARが苦手とする林内で、胸高直径・立木位置・材積の推定に必要な幹の点群を地上から直接取得できます。長時間の山地歩行を伴うため軽量なSLAM200E・LiGrip O2 Liteが有利です。
出来形管理・i-Construction
起工測量から出来形計測まで、据付不要のSLAM計測は測量工数を大幅に削減します。公共座標系での納品が必要なため、RTK GNSS内蔵のLS600、またはSLAM100+CORS/PPK運用が推奨構成です。
BIM/CIM・建物調査
屋内外を連続で歩いて計測できるため、現況建物のas-built点群からのBIMモデリング、リノベーション前調査、施設維持管理台帳の3D化に適します。狭い室内での取り回しを考えると軽量機が有利です。取得点群からのBIM/CIMモデル作成はAPEXのBIM/CIMデータ作成サービスで対応できます。
3DGS(3D Gaussian Splatting)・デジタルツイン制作
点群に加えてフォトリアルな3D空間そのものを納品物にする用途が急拡大しています。パノラマカメラと組み合わせた1回のスキャンでカラー点群・パノラマ画像・3DGSモデルを同時生成できるPocket 3Dが最速の導入ルートで、測量精度と3DGSを両立させたい場合はデュアル12MPカメラ搭載のLiGrip SE・LiGrip O2シリーズが適します。施設のバーチャル内覧、文化財のデジタルアーカイブ、AIシミュレーション用の空間データ制作に使えます。
鉱山・備蓄量(体積)計測
土量・ストックパイル体積は点群からの算出が最速です。粉塵環境・広い採掘空間ではIP54以上の防塵性と長距離計測が効きます。SLAM100(IP54)以上のクラスを推奨します。
公共測量マニュアルへの対応
ハンドヘルドSLAMスキャナーによる計測は、国土地理院「LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル(最新版: 令和8年3月版)」に基づき公共測量への活用が可能です。同マニュアルは、SLAM LiDARで取得した点群の点密度・精度検証・作業手順の基準を定めており、適切な作業方法(基準点との整合確認、ループ計測、精度管理表の作成)を踏むことで、グリッドデータ・等高線・数値地形図といった測量成果品を作成できます。
APEXでは導入時に、マニュアル準拠の作業フロー構築・精度検証の実施支援まで含めてサポートしています。導入講習とあわせてご相談ください。
価格帯と導入方法|購入・レンタル・補助金
価格帯の考え方
ハンドヘルドSLAMスキャナーの価格はエントリー(安価)・ミドルレンジ(中価格帯)・ハイエンド(高価格帯)の3クラスに分かれます。エントリークラスはGNSS非依存のシンプル構成で導入ハードルが低く、ミドルレンジはRTK/GNSS連携による測量成果品対応、ハイエンドは長距離・高密度・高画質カメラによる大規模案件対応が価格差の中身です。「安い機種=劣る」ではなく、現場条件と納品物の要求精度に対して過不足のないクラスを選ぶのが費用対効果の最適解です。具体的なお見積りは構成(バッテリー・ソフトライセンス・講習)により変動するため、お問い合わせください。
レンタルで試す
単発案件や導入前検証にはAPEXストアのレンタルが利用できます。実案件データで精度・ワークフローを確認してから購入判断ができます。
補助金の活用
ものづくり補助金・事業再構築補助金・IT導入補助金など、3D計測機器の導入に活用できる制度があります。APEXでは補助金申請代行もあわせて提供しており、機器選定から申請書類まで一気通貫で支援します。
よくある質問(FAQ)
ハンドヘルドSLAMスキャナーの精度はどのくらいですか?
相対精度2〜3cmが現行機の標準です。RTK/GNSS連携時の絶対精度は3〜5cm程度で、公共測量や出来形管理にも適切な作業方法のもとで利用できます。
GPSが届かない屋内や地下でも計測できますか?
できます。SLAM技術が機器自身の位置をセンサーデータから推定するため、GNSS(GPS)信号は不要です。屋内・地下街・トンネル・森林・ビルの谷間が代表的な適用環境です。
ドローンのような飛行申請は必要ですか?
不要です。手持ちで歩いて計測するため、航空法の許可承認手続きは発生しません。立入に許可が必要な現場(鉄道・道路・施設内)の手続きは通常の立入手続きに従います。
地上型レーザースキャナー(TLS)とどちらを選ぶべきですか?
ミリ単位の精度が必要ならTLS、据付不要のスピードと屋内外の連続計測が必要ならハンドヘルドSLAMです。据付・盛替え工数を含めた現場全体の生産性ではSLAMが優位なケースが多く、両方を併用する現場も増えています。
取得した点群データはCADやBIMソフトで使えますか?
使えます。.las/.laz/.ptsなどの標準フォーマットで出力できるため、主要なCAD・BIM/CIM・点群処理ソフトでそのまま読み込めます。
1回の充電でどのくらい計測できますか?
連続2〜2.5時間が標準です。各機種とも交換式バッテリーに対応しており、予備バッテリーの持参で実質終日の運用が可能です。
計測にはループを組む必要があると聞きました。なぜですか?
SLAMは移動距離に応じて誤差が蓄積するため、開始地点付近へ戻る経路(ループ)を組むと閉ループ補正が働き、軌跡全体の歪みが自動補正されて精度が安定するためです。最新機には長距離でもループ依存度を下げたアルゴリズムを搭載したモデルもあります。
公共測量に使えますか?
使えます。国土地理院のLidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル(最新版: 令和8年3月版)に準拠した作業方法(精度検証・点密度確保)を踏むことで、数値地形図等の成果品作成に活用できます。
操作は難しいですか? 測量の専門知識は必要ですか?
計測自体は電源を入れて歩くだけで、専用スマホアプリで点群をリアルタイム確認しながら進められます。成果品作成(座標変換・精度管理)には測量知識が必要ですが、APEXの導入講習でワークフローごと習得できます。
3DGS(3D Gaussian Splatting)のモデル制作にも使えますか?
使えます。Pocket 3D、LiGrip SE、LiGrip O2シリーズは高解像度パノラマカメラとの組み合わせで3DGSモデルの生成に対応しており、点群と同時にフォトリアルな3D空間を制作できます。デジタルツイン構築やバーチャル内覧に活用されています。
購入前に実機を試せますか?
試せます。デモのご依頼のほか、APEXストアのレンタルで実案件を計測してから導入判断が可能です。お問い合わせフォームからご相談ください。
機種選定に迷ったら、現場条件(屋内外・面積・要求精度・納品物)をお知らせください。LiDAR/SLAM計測の専門商社として、機種選定・精度検証・導入講習・補助金申請までワンストップで支援します。

