ハンディSLAMとは?仕組み・精度・TLSとの違いを2分動画で解説|ハンドヘルド3Dスキャナ入門
三脚を据えて、計測して、移動して、また据える。現場の3次元計測は長らくこの繰り返しでした。ハンディSLAM(ハンドヘルドSLAM)は、この前提を変える技術です。手に持って歩くだけで、周囲が三次元の点群データに変わります。
この記事では、ハンディSLAMの仕組み、精度の目安、地上型レーザースキャナ(TLS)やドローンLiDARとの使い分け、そして公共測量での扱いまでを、現場目線で整理します。まずは2分の解説動画で全体像をつかんでください。
ハンディSLAM(ハンドヘルドSLAM)とは
ハンディSLAMとは、LiDAR(レーザースキャナ)とIMU(慣性計測装置)を組み合わせた手持ち型の3Dスキャナで、歩きながら自分の位置を推定し、同時に周囲を点群として記録する計測方式です。
呼び方は現場によってさまざまで、「ハンドヘルドSLAM」「スラム ハンディ」「ハンディスラム」「SLAMハンディ」「手持ち型レーザースキャナ」などと呼ばれますが、いずれも同じ技術を指しています。カテゴリとしては「ハンディ3Dスキャナー」「ハンドヘルドLiDAR」「モバイル3Dスキャナ」に分類されます。
最大の特徴は据付けが要らないことです。従来の地上型レーザースキャナは1筧所ずつ三脚に据えて計測し、後から複数のスキャンを位置合わせする必要がありました。ハンディSLAMは歩行そのものが計測になるため、この工程が丸ごと不要になります。
SLAMの仕組み ─ 自己位置推定と地図構築を「同時に」行う
SLAMは Simultaneous Localization and Mapping の略で、日本語では「自己位置推定と地図構築の同時実行」と訳されます。GPSが届かない屋内や地下でも自分の位置がわかるのは、この仕組みによるものです。
1. レーザーで周囲までの距離を測る
機体に搭載されたLiDARが、毎秒数十万点のレーザーを周囲に照射し、対象物までの距離を測定します。たとえば当社が取り扱うLiGrip O2 Lite の詳細スペックでは、Mid360 LiDARを搭載し、毎秒20万点、最大70m(反射率80%時)の測定に対応します。
2. スキャンの重なりを照合して移動量を逆算する
連続して取得したスキャンには必ず重なりがあります。この重なり部分を照合することで「自分がどれだけ動いたか」を逆算できます。同時にIMUが姿勢の変化を捉え、傾きや回転を補います。これがSLAMの中核です。
3. ループクロージャで累積誤差を補正する
移動量の逆算を積み重ねる方式である以上、歩いた距離に応じて誤差は少しずつ溜まっていきます。これをドリフト(累積誤差)と呼びます。
そこで使われるのがループクロージャです。計測中に「以前通った場所に戻ってきた」ことを検出すると、始点と終点のズレを手がかりに軌跡全体をまとめて補正します。計測ルートを一筆書きで閉じるのが、精度を出す実務上のコツです。行き止まりで折り返す場合も、可能な限り出発点に戻って計測を終えてください。
地上型レーザースキャナ(TLS)・ドローンLiDARとの違い
ハンディSLAMは万能ではありません。それぞれに得意領域があり、使い分けが前提です。
| 比較項目 | 地上型TLS | ドローンLiDAR | ハンディSLAM |
|---|---|---|---|
| 精度 | mm級の絶対精度 | 面を一気に取得 | 相対1〜2cm級 |
| スピード | 1点ずつ据付け | 上空から広範囲 | 歩くだけ・1人でOK |
| 手間 | 位置合わせが必要 | 飛行申請・天候の制約 | 据付け不要 |
| 得意な現場 | 高精度が要る構造物 | 広域の地形・土工 | 屋内・地下・狭所 |
ハンディSLAMなら、同じ範囲を大幅に短い時間で、しかも1人で計測できます。一方でミリ単位の絶対精度が要求される出来形計測や構造物の変位計測では、引き続きTLSが必要です。「面的なスピードと機動力はハンディSLAM、ミリ精度はTLS」と覚えておくと選定を誤りません。
ハンディSLAMの精度はどのくらいか
精度の話は「相対精度」と「絶対精度」を分けて考える必要があります。
相対精度:おおむの1〜2cm級
相対精度とは、点群内部の形状がどれだけ正確かを示す指標です。機種によっておおむね1〜2cm級で、たとえば LiGrip O2 Lite は相対精度2cm以下、上位機のLiGrip O2 の詳細スペックでは相対精度1cm未満・絶対精度3cm未満とされています。壁の直交性や断面形状の再現には十分な水準です。
絶対精度:GNSSまたは標定点との結合が前提
絶対精度とは、点群が現場座標系のどこに載っているかの正確さです。ハンディSLAM単体では絶対座標を持たないため、GNSS/RTKとの連携、または標定点(GCP)との結合が必要になります。この工程を省くと、形は正しいのに位置がずれた点群ができあがるので注意してください。
ハンディSLAMの使いどころ
ドローンや航空機が入れない現場こそ、ハンディSLAMの独壇場です。
- 屋内 ─ 工場・倉庫・建物内部のBIM/CIM用モデリング
- 地下 ─ 地下街、共同溝、坑内の3次元記録
- トンネル ─ 覆工の断面計測、出来形管理
- 林内 ─ 樹冠に遮られて航空レーザーが届かない地形・毎木調査
- 橋梁・高架下 ─ 上空からは撮れない下面の記録
- プラント ─ 配管が密集した狭所の現況把握
公共測量で使えるのか ─ LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル
導入検討で必ず出てくるのが「公共案件で使えるのか」という論点です。結論から言えば、すでに制度の土俵に上がっています。
国土地理院は「LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル」(令和4年6月公表/令和5年9月改正)を整備しており、手持ち型・装着型のレーザスキャナを用いた測量作業が規定されています。適用範囲や精度確保の要件はマニュアル本文をご確認ください。
また、国土交通省の「3次元計測技術を用いた出来形管理要項(案)」でも3次元計測技術の活用が進んでおり、活用の幅は年々広がっています。
ハンディSLAMの選び方 ─ 3つの軸
機種選定で見るべきポイントは、突き詰めると次の3つです。
1. 測距距離
40m級か、100mを超えるか。トンネルの断面や大空間を扱うなら長距離対応が要ります。逆に屋内中心なら過剰スペックになります。
2. 相対精度
0.5cm級から2cm級まで幅があります。成果物に求められる精度から逆算してください。
3. 稼働時間
1バッテリで何分歩けるか。現場の実働時間に直結するため、カタログ値だけでなく予備バッテリの運用も含めて検討します。
「最高スペック」ではなく「用途に対して過不足のない1台」を選ぶことが、費用対効果を最大にする近道です。
主要9機種の比較データをご用意しています
APEXでは、ハンドヘルドSLAMスキャナー主要9機種について、相対精度・測距距離・稼働時間・RTK/GNSS対応・価格帯を一覧にした比較表を公開しています。機種選定の出発点としてご活用ください。
現場でそのままお試しいただける無料デモ、実測ベースの精度検証レポート、レンタル/購入のお見積りにも対応しています。お問い合わせフォーム、またはお電話(03-6822-8754)よりお気軽にご相談ください。
よくある質問
ハンディSLAMとは何ですか?
LiDARとIMUを組み合わせた手持ち型の3Dスキャナで、歩きながら自己位置を推定し、同時に周囲を三次元の点群として記録する計測方式です。SLAMはSimultaneous Localization and Mapping(自己位置推定と地図構築の同時実行)の略で、三脚の据付けや後からの位置合わせを必要としません。
ハンディSLAMの精度はどのくらいですか?
相対精度はおおむね1〜2cm級(機種により0.5〜2cm程度)が目安です。絶対精度を確保するには、GNSS/RTKや標定点との結合が前提となります。mm級の絶対精度が求められる用途では地上型レーザースキャナ(TLS)との使い分けが必要です。
地上型レーザースキャナ(TLS)との違いは?
TLSは1点ずつ据え付けて計測し、後から位置合わせを行うためmm級の高精度が得られる一方、時間と人手がかかります。ハンディSLAMは据付けが不要で、同じ範囲を大幅に短い時間で、1人でも計測できます。屋内・地下・トンネル・林内など、ドローンや航空機が入れない現場に強いのが特徴です。
ハンディSLAMは公共測量に使えますか?
国土地理院が「LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル」(令和4年6月公表/令和5年9月改正)を整備しており、手持ち型・装着型レーザスキャナを用いた測量作業が規定されています。適用範囲や精度確保の要件はマニュアル本文をご確認ください。

