UAVレーザー測量の品質を決めるもの|LiAir H600 Proのシングルレーザーと点群の「厚み」を徹底解説

UAVレーザー測量の品質を決めるもの|LiAir H600 Proのシングルレーザーと点群の「厚み」を徹底解説

UAV LiDARの走査方式による点群パターンの違い

UAVレーザー測量(UAV LiDAR)で成果品質を左右するのは、カタログ上の「点/秒」だけではありません。実際の現場では、どの高度からどんな走査方式で取得し、その結果点群の「厚み」がどれだけ薄いかが、地表面抽出や等高線作成の精度を決定づけます。

本記事では、GVI(GreenValley International)のLiAir H600 Proを題材に、シングルレーザー方式の原理、高高度150m以上での点密度の考え方、そしてHesai系・Livox系スキャナーとの技術的な違いを解説します。

参考動画:LiAir H600シリーズ(GreenValley International)

LiAir H600シリーズの公式紹介動画(H600 Proは本シリーズの上位機)

LiAir H600 Proのシングルレーザー方式とは

H600 Proが搭載するのは、1本の高出力レーザーを走査ミラーで振る「シングルレーザー(単一ビーム)+走査機構」方式のマッピンググレードLiDARです。マルチビーム型が32本などの固定ビームを回転させるのに対し、シングルレーザー方式は1本のビームを高速に振ることで、規則的な平行ラインを描きます。

この構造には、測量用途で決定的に有利な3つの特性があります。

① 測距ノイズが小さい:1つの受光系を徹底的に較正できるため、距離のばらつき(レンジノイズ)を抑えられます。マルチビーム型では32個の受発光素子それぞれに個体差があり、ビーム間のわずかな較正誤差が点群の厚みとして現れます。
② 出力を1本に集中できる:エネルギーを分散させないため、遠距離でも反射信号が確保でき、高高度からの計測が成立します。
③ 点の並びが規則的:等間隔の平行ラインになるため、地表面分類(グラウンド抽出)や断面図作成のアルゴリズムが安定します。

走査方式による点群の並び方の違い

UAV LiDARの走査方式による点群パターンの違い
走査方式ごとの点群パターン。同じ点数でも「並び方」が品質を左右する

シングルレーザー+走査ミラー(H600系):平行ラインが等間隔に並び、飛行方向・直交方向ともに密度が均一。図化・断面作成に最も扱いやすい形式です。

マルチビーム回転式(Hesai XT32など):32本の固定ビームが回転しながら面を作ります。ビームの垂直角が固定のため、対象までの距離が伸びるほどライン間隔が広がるのが構造上の宿命です。近距離の車載MMSや低高度飛行では非常に高効率ですが、高高度からの地形計測では地表でのライン間隔が粗くなります。

非反復スキャン(Livox系):回転プリズムにより花弁状の軌跡を描き、同じ場所を見続けるほど密度が上がる方式です。低コストで高密度が得られる一方、点の分布が不均一になりやすく、飛行速度が上がると疎な領域が生じます。また測距ノイズが相対的に大きく、点群の厚みが増える傾向があります。

点群の「厚み」がなぜ重要なのか

測距ノイズによる点群の厚みの違いを示す概念図
同じ平面を計測しても、測距ノイズが大きいと断面が膨らむ

「点群の厚み」とは、平坦な面を計測したときに点がどれだけ薄い層に収まるかを示す指標です。LiAir H600シリーズは200m先でも点群厚み3cm未満という値を公称しています。これは以下の実務的なメリットに直結します。

グラウンド抽出が正確になる:厚みが大きいと、地表面と低い草・地物の区別がつかなくなり、フィルタリングで地面が削れたり残ったりします。
等高線が滑らかになる:断面のばらつきが小さいほど、生成される等高線のギザつきが減ります。
土量計算の誤差が減る:面全体でノイズが平均化されず偏ると、体積計算に系統的な誤差が乗ります。
電線・細部の形状が保たれる:厚みが大きいと細い線状構造がぼやけ、離隔測定の信頼性が下がります。

つまり「点数が多い=高品質」ではありません。薄い点群であることが、そのまま成果物の精度になります。

高高度150m以上で計測する意味

LiAir H600と他製品の点群比較
同一条件での点群比較。密度と輪郭の明瞭さに差が出る

H600は最大150m、H600 Proは最大250mの飛行高度に対応し、1フライトで最大200haをカバーします。高高度で飛べることの価値は、単なる効率だけではありません。

スワス幅が広がり、フライト本数が減る:飛行高度に比例して1本あたりの計測幅が広がるため、往復回数が減り、コース間の接合誤差そのものが減ります。
山岳地の対地高度を確保できる:起伏の大きい現場では、低高度設定だと尾根で地面に近づきすぎ、谷では遠くなって密度が破綻します。高高度対応機なら安全な対地高度を保ったまま均質なデータが得られます。
送電線・急斜面に近づかずに済む:リスクの高い対象から距離を取って計測できます。

ただし高高度化には条件があります。距離が伸びれば反射信号は弱まり、点密度は距離の二乗に反比例して低下します。これを補うのが「出力を1本に集中するシングルレーザー」と「90万点/秒のスキャンレート」の組み合わせです。H600 Proは250m上空からでも±3cmの絶対精度を公称しており、高度と精度を両立しています。

H600とH600 Proのスペック比較

項目 LiAir H600 LiAir H600 Pro
最大飛行高度 150 m 250 m
スキャン速度 550,000 pts/sec 900,000 pts/sec
絶対精度 ±5 cm ±3 cm
搭載カメラ 26 MP 45 MP フルフレーム
本体重量 1.3 kg 1.4 kg
波形リターン 無制限 無制限
クラウド連携 Apex Cloud対応

Hesai・Livox・シングルレーザーの使い分け

観点 シングルレーザー
(H600系)
マルチビーム回転
(Hesai系)
非反復スキャン
(Livox系)
点の分布 等間隔の平行ライン ライン状(距離で間隔が拡大) 花弁状・不均一
測距ノイズ 中〜大
高高度適性 ◎(150〜250m) △(近〜中距離向き)
コスト
向いている用途 公共測量・広域地形・送電線 車載MMS・近距離の面計測 小規模現場・コスト重視

誤解を避けるために補足すると、これは優劣ではなく設計思想の違いです。近距離を高密度に埋めるならマルチビーム回転式が効率的で、実際に車載MMSやハンディSLAMではHesai系が主力です。一方、上空150m以上から地形を均質・高精度に取得するという要件では、シングルレーザー方式が構造的に有利になります。

森林・植生下の計測とマルチリターン

森林地帯のUAVレーザー測量
樹冠に覆われた森林でも、レーザーの隙間透過により地盤形状を取得できる

UAVレーザーの最大の武器は、樹冠の隙間を通り抜けたレーザーが地面に到達し、その反射を捉えられる点です。H600シリーズはリターン数無制限(フルウェーブフォーム系)に対応しており、1発のパルスから樹冠・枝葉・下層植生・地表面といった複数の反射を記録できます。

ここでも点群の厚みが効きます。厚みが薄いほど、最終リターン(地表面)と直前のリターン(低木)を分離しやすく、伐採前の地盤モデル精度が向上します。詳しくはドローン測量とは?もご覧ください。

実務でのチェックポイント

機種選定・発注時に確認したい項目です。

1. 「点/秒」ではなく「地表での点密度(点/m²)」で比較する:飛行高度・速度・スワス幅で実際の密度は大きく変わります。
2. 点群厚みの公称値と測定条件を確認する:「何m先で何cm」という条件付きの値です。
3. 絶対精度は検証点で確かめる:カタログ値ではなく、GCP・検証点による実測が唯一の証明です。
4. リターン数と最終リターンの品質:森林案件では地表面の点数密度を必ず確認します。
5. 後処理ソフトとの整合:点群の並びが規則的だと、自動分類の成功率が上がります。

まとめ

UAVレーザー測量の品質は「点数の多さ」ではなく、薄い点群を、均一な密度で、必要な高度から取得できるかで決まります。LiAir H600 Proは、シングルレーザー方式による低ノイズ・高出力と、250mの高高度対応・90万点/秒のスキャンレートを組み合わせることで、広域を短時間に、かつ公共測量水準の精度で取得することを狙った構成です。

APEX株式会社では、H600/H600 Proの販売・デモ・導入講習に加え、UAVレーザーによる計測受託と点群解析の代行まで対応しています。サンプルデータのご提供も可能ですので、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。