MMS(車載モービルマッピング)とは?LiMobile M2/M2 Pro/M2 Ultraの違いを徹底解説

MMS(車載モービルマッピング)とは?LiMobile M2/M2 Pro/M2 Ultraの違いを徹底解説

車載MMSがGNSS開空環境とトンネル内でどのように測位するかを示す概念図

MMS(Mobile Mapping System:モービルマッピングシステム)は、車両にLiDAR・カメラ・GNSS/IMUを搭載し、走行しながら道路と沿道空間を3次元計測するシステムです。時速40〜60kmで走りながら数cm精度の点群を取得できるため、道路台帳や施設管理、i-Construction、HDマップ整備、デジタルツイン構築に不可欠な技術になっています。

本記事では、MMSの仕組みと成果精度の考え方を整理したうえで、GVI(GreenValley International)のMMS「LiMobile」シリーズ3機種(LiMobile M2 / M2 Pro / M2 Ultra)を用途別に比較解説します。

MMS(車載モービルマッピング)とは

車両ルーフに搭載したMMSユニット
車両ルーフに搭載したMMS計測ユニット(LiDAR・パノラマカメラ・GNSSを統合)

MMSは、次の4種類のセンサーを1台に統合し、それぞれの弱点を補い合うことで走行中の高精度計測を実現します。

① LiDAR(レーザースキャナー):路面・法面・構造物・電柱・標識などの形状を毎秒数十万〜百数十万点で取得
② GNSS:衛星測位により点群に絶対座標を与える
③ IMU(慣性計測装置):車体のロール・ピッチ・方位を高頻度で計測し、揺れによる歪みを補正
④ DMI(車輪オドメータ):車輪の回転数から走行距離を実測し、GNSSが途切れる区間の位置推定を支える

加えて近年の機種はレーザーSLAMを併用します。これにより、GNSSが使えないトンネル内・高架下・ビル街の谷間でも自己位置推定を継続できます。

MMSの測位の仕組み(GNSS遮蔽への対処)

車載MMSの測位の仕組み(GNSS・IMU・SLAM・DMI)
開空環境ではGNSS+IMU、GNSS遮蔽区間ではSLAM+DMIが位置を支える

MMSの成果品質を左右する最大の要因は「GNSSがどれだけ安定して受からえるか」です。開空環境ではGNSS/IMU統合(PPK処理)により水平1cm・垂直2cm級の測位が可能ですが、トンネルや高層ビル街ではマルチパスや遮蔽で測位が破綻します。

ここで効くのがSLAMとDMIです。SLAMは壁面や路面の形状照合で自己位置を継ぎ、DMIは車輪回転から実距離を与えてドリフトの拡大を抑えます。実務では、トンネル出入口のGNSS良好区間を「支点」にして区間全体を最適化するのが定石で、必要に応じて路面にGCP(地上基準点)を設置して絶対精度を担保します。GCPの考え方はハンディSLAM徹底解説でも詳しく触れています。

LiMobileシリーズ 3機種の比較

GVIのLiMobileシリーズは、必要な精度と予算に応じて3グレードから選択できます。

項目 LiMobile M2 LiMobile M2 Pro LiMobile M2 Ultra
位置づけ コストパフォーマンス重視のスタンダード 精度と価格のバランス型ミドルクラス 測量グレードのハイエンド
LiDAR構成 Hesai XT32M2X ×2基
(水平+30°傾斜)
マッピングLiDAR+SLAM用LiDAR RIEGL VUX系(長距離・高精度)+Hesai XT32M2X(SLAM用)
点取得レート 128万点/秒(デュアルリターン) 機種構成による 長距離LiDARにより高密度・遠方まで取得
測距精度 ±1cm ±1cm級 ミリメートル級
相対精度 ≤2cm ≤2cm級 1cm級
絶対精度 ≤5cm ≤5cm級 1.5cm級
パノラマカメラ Ladybug5+(30MP)/Ladybug6(72MP)オプション Ladybug5+/6 Ladybug6(72MP)対応
主な用途 道路台帳、沿道資産抽出、都市林業 道路維持管理、GIS資産管理 公共測量、HDマップ、デジタルツイン

※M2 Proの詳細スペックはメーカー公開情報が限定的なため、上表は位置づけベースの記載です。個別案件のご検討時には最新のスペックシートをご提供します。

LiMobile M2|導入しやすいデュアルLiDAR構成

LiMobile M2 本体
LiMobile M2|本体外観(デュアルLiDAR+パノラマカメラ)
LiMobile M2の主要スペック
LiMobile M2|スタンダードグレードの主要スペック

水平配置と30°傾斜配置のHesai XT32M2Xを2基搭載し、路面と沿道の両方を効率よく取得します。デュアルリターンで128万点/秒、測距精度±1cm、相対精度≤2cm・絶対精度≤5cm(時速40km走行・GVI校正フィールドでの実測値)。IP65、連続稼働6時間以上、1TB×2のストレージを備え、7段階(0°/±15°/±30°/±45°)のマウント角度をクイックリリースで変更できます。道路台帳整備や沿道資産の抽出といった実務の主力機です。

LiMobile M2 Pro|精度とコストの中間解

LiMobile M2 Pro 本体
LiMobile M2 Pro|車両ルーフへの搭載例
LiMobile M2 Proの主要スペック
LiMobile M2 Pro|ミドルクラスの主要スペック

マッピング用LiDARとSLAM用LiDARを組み合わせたミドルクラスで、M2の運用性を保ちながら測位安定性を高めた構成です。GNSS環境が読みにくい市街地での道路維持管理や、GIS資産管理の定期更新など、「M2では精度が足りないがUltraは過剰」という案件に適します。

LiMobile M2 Ultra|測量グレードの最上位機

LiMobile M2 Ultra 本体
LiMobile M2 Ultra|本体外観(長距離LiDAR+GNSSアンテナ)
LiMobile M2 Ultraの主要スペック
LiMobile M2 Ultra|測量グレード最上位の主要スペック

長距離・高精度なRIEGL VUX系LiDARをマッピング用に、Hesai XT32M2XをSLAM用に搭載したデュアル構成。ミリメートル級の測距精度と1.5cm級の絶対精度を実現し、72MPのLadybug6パノラマカメラにも対応します。公共測量に準じた成果、HDマップ整備、デジタルツイン構築など、精度が最重要となる案件向けです。

共通の強み:拡張性とワークフロー

豊富なオプション:路面性状を詳細に評価する路面カメラ、標識を高解像度で捉える前方カメラ、DMI、外部センサーに対応。
柔軟な設置:クイックリリース設計とルーフラックにより、車種を問わず短時間で着脱できます。
ソフトウェア:取得データはGreenValley APPで現場監視しながら記録し、LiDAR360MLSで前処理から成果作成までワンストップ処理。点群はLAS/LAZ/LiDataで出力できます。

MMSの主な活用シーン

道路台帳・道路維持管理:舗装のわだち・ひび割れ評価、区画線や標識の位置情報整備
インフラ点検:トンネル・橋梁の断面計測、建築限界の確認
電力・通信設備管理:架線の弛度計測、離隔測定、支持物の台帳化
都市林業・街路樹管理:樹木位置・樹高の一括把握
HDマップ/デジタルツイン:自動運転向け高精度地図、都市3Dモデル整備
i-Construction:起工測量や出来形管理の一部への活用

MMSとドローン測量・ハンディSLAMの使い分け

手法 得意な対象 不得意・制約
MMS(車載) 道路・沿道の線形が長い対象を高速に 車両が入れない場所、路面から見えない上部
UAVレーザー測量 広域の地形、森林・植生下、屋根上 飛行申請・天候の制約
ハンディSLAM 屋内、狭所、構造物のディテール 広域は歩行時間がかかる

実務では単独運用よりも組み合わせが有効です。たとえば市街地の一体整備なら、幹線道路をMMS、路地や構内をハンディSLAM、屋根や斜面をUAVで補完し、共通のGCPで統合するのが精度と工期の両面で最適になります。

よくある質問

Q. トンネル内でも計測できますか?

A. 可能です。SLAMとDMIによりGNSSがない区間の位置推定を継続します。長大トンネルでは出入口のGNSS区間で拘束し、必要に応じて内部にGCPを配置します。

Q. 走行速度はどのくらいですか?

A. 一般に時速40〜60km程度での計測が標準です。速度を上げると点密度が低下するため、求める成果に応じて調整します。

Q. 計測だけ・解析だけの依頼もできますか?

A. どちらも可能です。計測代行から点群解析の外注、機材販売・導入講習までワンストップで対応します。

まとめ

MMSは「道路という線形の対象を、走りながら面的に3次元化する」ための最適解です。機種選定のポイントは、求める絶対精度GNSS環境の厳しさの2軸です。道路台帳や資産抽出が主目的ならLiMobile M2、市街地中心で安定性を高めたいならM2 Pro、公共測量やHDマップなど精度が最重要ならM2 Ultra、という切り分けが実務的です。

APEX株式会社では、LiMobileシリーズの販売・デモ・導入支援に加え、MMSによる計測受託と点群解析まで対応しています。現場条件をお聞かせいただければ最適な構成をご提案します。お問い合わせはこちら