LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル解説|SLAMスキャナーを公共測量に使う手順
ハンドヘルドSLAMスキャナーによる計測は、国土地理院「LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル」に従うことで公共測量に使用できます。本マニュアルは作業規程の準則第17条第3項に基づく「新しい測量技術による測量方法に関するマニュアル」の1つで、2022年6月の初公開後も改訂が重ねられ、最新版は令和8年(2026年)3月版です。本記事では、SLAM計測機器の専門商社であるAPEX株式会社が、マニュアルの位置づけ・事前に必要な精度・性能試験・作業手順・作成できる成果品を、実務に使える粒度で解説します。
マニュアルの位置づけ|なぜSLAMで公共測量ができるのか
結論: このマニュアルに従った作業を行うことで、LidarSLAM技術を用いた機器を公共測量に使用できます。根拠は、作業規程の準則(平成20年 国土交通省告示第413号)第17条第3項です。同項は、国土地理院が定める「新しい測量技術による測量方法に関するマニュアル」に従うことで、準則に直接規定のない新技術を公共測量に用いることを認めており、LidarSLAMマニュアルはその1つとして整備されています。
つまり「SLAMスキャナーは新しい機器だから公共測量には使えないのでは?」という懸念は、既に制度面で解消されています。問われるのは機器そのものの新旧ではなく、マニュアルが定める試験・手順・精度管理を満たしているかです。
作成できる成果品
マニュアルは、LidarSLAM機器で取得するオリジナルデータ(生の点群)の作成・点検方法と、それを編集して作る次の成果品の作業手順を規定しています。
| 成果品 | 内容 | 主な用途 |
|---|---|---|
| オリジナルデータ | 計測で取得した三次元点群 | 全成果品の元データ |
| グラウンドデータ | 地表面のみを抽出した点群 | 地形解析・土量計算 |
| グリッドデータ | 格子状に整理した標高データ | DEM作成・断面抽出 |
| 等高線データ | 標高の等値線 | 地形図表現 |
| 数値地形図データ | 地物を含む地形図 | 公共測量成果としての納品 |
i-ConstructionのICT土工における起工測量・出来形計測用の三次元点群データ作成にも活用でき、従来のドローンや地上型レーザーと同様に、要求仕様に応じた成果品を効率的に作成できます。
使用前に必須の「精度・性能試験」
LidarSLAM機器は測量に使用する前に、要求仕様を満たす成果が得られることを確認する精度・性能試験の実施が必要です。これはマニュアルが明確に求めている手続きで、機器によってセンサー構成・SLAMアルゴリズム・性能が大きく異なることが理由です。試験結果は「LidarSLAM機器精度・性能試験記録(様式1)」として記録します。
実務上のポイントは、この試験記録が発注者への説明資料としてそのまま機能することです。APEXでは取扱機器(SLAM100、LiGripシリーズ等)の導入時に、マニュアル様式に沿った精度・性能試験の実施を支援しています。機器選定の段階から「どの機種なら要求精度を満たせるか」を試験前提で逆算するのが失敗しない導入手順です。機種ごとの精度スペックはハンドヘルドSLAMスキャナー全8機種の比較表で確認できます。
精度確認の方法|標定点・検証点との較差
精度の確認は、標定点および検証点と点群との較差によって行います。準則や出来形管理要領(案)には利用目的ごとの要求精度の標準値が定められており、例えばi-ConstructionのICT土工で用いる三次元点群データでは、起工測量で必要な精度が標定点等との較差として規定されています(具体的な数値基準は最新版マニュアルの該当表を参照してください。)。
SLAM計測で精度を安定させる実務テクニックは次の3つです。第一に閉ループの設計。計測経路を開始地点付近へ戻すことで、SLAM特有の累積誤差が閉ループ補正により自動修正されます。第二に基準点・検証点の事前配置。較差評価に使う点を計測前に計画的に配置し、点群上で明瞭に識別できるターゲットを用います。第三に重複計測の管理。同一範囲を過度に重ね取りすると点群のズレが混入するため、計画的な経路設計で一筆書きに近い計測を心がけます。
点密度の考え方|区分設定が実務のコツ
LidarSLAM計測は歩行速度・対象物との距離によって点密度が変動するため、一様な点密度で計測範囲全体を網羅することは構造的に困難です。マニュアルもこの特性を踏まえ、特に数値地形図作成では「図化対象とする地物を含む範囲」と「含まない範囲」で要求点密度の区分を設けることが望ましいとしています。
実務では、図化対象(構造物・道路縁・法肩など)の周辺は歩行速度を落として高密度に、それ以外は通常速度で、と計測計画の段階でメリハリを設計しておくと、過剰品質による工数増と密度不足による再計測の両方を避けられます。
計画機関向け|要求仕様の策定
マニュアルには測量計画機関(発注者)向けの章が設けられており、成果品の品目・要求点密度・要求精度を「要求仕様」として明確化することを求めています。要求仕様が明確であれば、作業機関は仕様に応じた作業計画を立てられ、過剰な精度の成果品を作るムダも防げます。発注側・受注側のどちらの立場でも、案件の入口で「品目・点密度・精度」の3点セットを文書で固定することが、LidarSLAM測量を円滑に進める最重要ポイントです。
実務ワークフロー(作業機関向けまとめ)
マニュアルに沿ったLidarSLAM公共測量の流れを一枚にまとめると、①要求仕様の確認(品目・点密度・精度) → ②機器の精度・性能試験(様式1) → ③計測計画(閉ループ・基準点/検証点・点密度区分の設計) → ④現地計測 → ⑤点群処理・点検(較差評価) → ⑥成果品作成(グラウンド/グリッド/等高線/数値地形図) → ⑦精度管理表と併せて納品となります。
このワークフロー全体を左右するのが②の機器選定です。相対精度・絶対精度・RTK/GNSS連携の有無は機種によって異なるため、要求仕様から逆算した機種選びが出発点になります。詳しくはハンドヘルドSLAMスキャナー比較と選び方【全8機種】を参照してください。
よくある質問
ハンドヘルドSLAMスキャナーは公共測量に使えますか?
使えます。国土地理院「LidarSLAM技術を用いた公共測量マニュアル」に従った精度・性能試験と作業手順を踏むことで、公共測量に使用できます。
マニュアルはどこで入手できますか?
国土地理院のウェブサイトで公開されており、無償でダウンロードできます。最新版は令和8年3月版です。
どの機種でも公共測量に使えますか?
機器ごとに性能が異なるため、使用前の精度・性能試験で要求仕様を満たすことの確認が必要です。要求精度が高い業務ほど、RTK/GNSS連携対応の測量グレード機を選定してください。
ドローンレーザーや地上型レーザーとの使い分けは?
広域はドローンLiDAR、ミリ級精度は地上型レーザー、GNSSが届かない屋内・地下・林内や狭所を含む現場はLidarSLAMが適します。同一案件内での併用・点群合成も一般的です。
機器の精度・性能試験からマニュアル準拠の作業フロー構築まで、APEXがワンストップで支援します。要求仕様(品目・点密度・精度)をお知らせいただければ、最適な機種と検証計画をご提案します。

