写真測量とドローンレーザー測量の違い|同じ現場を両方で測ったら樹冠下で13mズレた

写真測量とドローンレーザー測量の違い|同じ現場を両方で測ったら樹冠下で13mズレた

植生に覆われた斜面では、写真測量の面は樹冠の上面になり、UAVレーザーは地面を捉える

写真測量とドローンレーザー測量(UAVレーザー測量)は、どちらも「ドローンを飛ばして三次元データを取る」技術です。ところが同じ現場を両方で測ると、場所によっては十数メートル単位で結果がずれます。この記事では、その差がどこから生まれるのか、どちらを選ぶべきかの判断基準、そして公共測量でどう扱われているのかまでを整理します。

動画:写真測量とドローンレーザーの違い|同じ現場を両方で測ったら樹冠下で13mズレた(約2分)
この記事でわかること
  1. 違いは「見えているか」ではなく「返ってくるか」
  2. 同じ現場を両方で測ると何が起きるか
  3. 写真測量の仕組みと、原理的な限界
  4. UAVレーザー測量の仕組み ─ マルチリターン
  5. 精度で比べる ─ 制度が求める値は実は同じ
  6. 費用と作業条件で比べる
  7. 4つの質問で決める使い分け
  8. 公共測量ではどちらが「原則」か

違いは「見えているか」ではなく「返ってくるか」

先に結論を書きます。両者の差は解像度でもカメラの性能でもありません。写真測量は「写真に写ったもの」しか三次元化できず、レーザー測量は「レーザーが当たって返ってきたもの」を三次元化する ── この一点です。

草や枝に覆われた斜面を上空から撮影すると、写真に写るのは草と枝の表面だけです。写真をどれだけ高解像度にしても、写っていない地面の標高を計算することはできません。一方レーザーは、葉と葉のすき間を通り抜けた光が地面に当たって返ってきます。すき間が数パーセントでもあれば、そこを通った光が地面の点を残します。

この違いが、平らな裸地ではほとんど表に出ません。裸地であれば、写真測量とUAVレーザー測量の結果はほぼ一致します。差が出るのは、地表が何かに覆われている現場だけです。

同じ現場を両方で測ると、何が起きるか

植生に覆われた斜面を、同じ日に写真測量とUAVレーザー測量の両方で計測しました。写真測量から作った地形面と、レーザーのグラウンドデータ(地面と判定された点)を重ねると、次のようになります。

最大 13m 写真測量でできる面(樹冠の上面) UAVレーザーのグラウンドデータ(本当の地面) 写真測量 UAVレーザー
植生下では、写真測量の成果は樹冠の上面をなぞった面になります。土量計算や法面の設計にそのまま使うと、樹高ぶんの誤差がまるごと乗ります。数値は当社の実測データによるもので、樹冠の密度・季節・飛行高度・機材によって変わります。

写真測量の面は、地面ではなく樹冠の上面をなぞっています。これは写真測量の不具合ではありません。写真に地面が写っていない以上、原理的にそうなるほかない結果です。

問題は、この面が見た目にはきれいな地形モデルに見えてしまうことです。点群としては密で、色もついていて、一見すると正常な成果に見えます。土量計算にかけて初めて、数字が合わないことに気づく ── これが植生下の現場で最も起きやすい事故です。

写真測量の仕組みと、原理的な限界

ドローン写真測量(UAV写真測量、SfM)は、重ねながら撮影した多数の写真から、同じ被写体が複数の写真のどこに写っているかを照合して、三角測量の要領で三次元座標を復元します。カメラという安価なセンサーで広い範囲を高密度に取得できるため、裸地の土工現場では今もいちばん費用対効果の高い方法です。

限界は3つあります。

  • 写っていないものは復元できない ── 植生下・水面下・構造物の裏側は取得できません
  • 模様のない面が苦手 ── 均一なコンクリート面や新雪など、照合の手がかりがない面では点が湧きません
  • 影と時間帯に左右される ── 強い影は照合を乱します。曇天が向くとされるのはこのためです

逆に言えば、植生がなく、模様があり、影が強くない現場では、写真測量で十分です。レーザーを持ち出す理由はありません。

UAVレーザー測量の仕組み ─ マルチリターンが地面を拾う

UAVレーザー測量は、レーザースキャナ・IMU(慣性計測装置)・GNSSを積んだ機体を飛ばし、「いつ・どこから・どの向きに撃ったレーザーが、何秒後に返ってきたか」を積み上げて点群を作ります。カメラのように「写す」のではなく、1点ずつ距離を測っていく方式です。

植生下を測れる鍵がマルチリターンです。1発のレーザーパルスはある程度の広がりを持って進むため、その一部が葉に当たって返り、残りがすき間を抜けてさらに奥へ進みます。1発のパルスから複数の反射を記録できるので、最後に返ってきた反射(ラストリターン)が地面の点になります。

UAVレーザー:1発のパルスから複数の反射 写真測量:見えた面の1点だけ 第1反射(樹冠) 第2反射(枝葉) 最終反射=地面 これがグラウンドデータになる 樹冠の1点で終わり この下は取得できない 地面の標高は推定するしかない
マルチリターンは「レーザーが葉を貫通する」現象ではなく、パルスの一部がすき間を通り抜ける現象です。したがって、すき間がまったくない密な常緑樹林では、レーザーでも地面の点は薄くなります。落葉期に飛ぶのが基本とされるのはこのためです。
レーザーなら必ず地面が取れる、わけではありません

マルチリターンで地面が拾えるかどうかは、樹冠のすき間率・レーザーの出力とビーム径・飛行高度・飛行速度で決まります。常緑針葉樹の密林を夏に飛べば、レーザーでも地面の点密度は大きく落ちます。「レーザーを使えば解決する」ではなく「レーザーなら条件次第で地面を取りに行ける」が正確な理解です。要求精度が厳しい案件では、事前に試験計測で点密度を確認することをおすすめしています。

精度で比べる ─ 制度が求める値は、実は同じ

「レーザーのほうが精度が高い」と説明されることがありますが、公共工事の制度上は、両者に精度の優劣はつけられていません。

国土交通省「3次元計測技術を用いた出来形管理の監督・検査要領(土工編)(案)」(令和7年3月)では、技術ごとの要求精度が次のように定められています。

計測技術要求精度付帯条件
空中写真測量(UAV)±50mm 以内地上画素寸法 10mm/画素 以内
無人航空機搭載型レーザースキャナー
(UAVレーザー)
±50mm 以内2周波GNSS を使用
地上型レーザースキャナー(TLS)±50mm 以内座標測定精度 14mm 以内(JSIMA115基準)
TS(ノンプリズム方式)平面 ±20mm・鉛直 ±20mm 以内

UAVレーザーと空中写真測量(UAV)は、いずれも ±50mm 以内で同等の扱いです。つまり制度が想定しているのは「どちらが正確か」ではなく「その現場で要求精度を満たせるか」です。

そして植生下では、写真測量はそもそも地面の点を持っていないため、精度以前に成果になりません。冒頭の13mという数字は「写真測量の精度が悪い」のではなく、「測るべきものを測っていない」ことを示した数字です。

  • 出来形管理 要求精度±50mmUAVレーザー・空中写真測量(UAV)とも同じ。優劣の区別はされていない
  • 準則の要求精度0.1m三次元点群測量のグラウンド/グリッド/等高線データ(標準偏差)
  • 点密度10〜100点/㎡同上。地図情報レベル500では400点/㎡以上

費用と作業条件で比べる

比較項目ドローン写真測量UAVレーザー測量
取得できるもの見えている面のみすき間を抜けた先まで(マルチリターン)
植生下取得できない条件次第で取得できる
色(RGB)写真そのものが色情報別途カメラが必要な機種もある
機材費の目安機体 20万円〜+ソフト 50万円前後センサー 200万円〜、構成総額 400万円〜
天候・時間帯影と光量に左右される夜間・曇天でも計測できる
模様のない面苦手(点が湧かない)影響を受けにくい
GCP(標定点)比較的多く必要少なくできるが、ゼロにはならない
向く現場裸地の土工、造成、ストックヤード森林、法面、河川敷、急傾斜地、災害調査

費用は現場条件で大きく変わるため一概には言えませんが、裸地であれば写真測量のほうが確実に安く上がります。UAVレーザーは機材が高価なぶん単価も上がるので、「植生下を測る必要があるか」がそのまま費用判断の分かれ目になります。費用の内訳と面積別の相場は ドローン測量の費用相場 で詳しく解説しています。

4つの質問で決める使い分け

実務では、次の順に確認すれば判断できます。

Q1 地表は見えているか? 草・枝・堆積物に覆われていないか Q2 求められる精度はいくつか? 出来形なら ±50mm 以内が要求値 Q3 水部を含むか? 含むならグリーンレーザーの検討へ Q4 飛行の安全と機材は確保できるか? 公共測量では、この2つが選定の条件になる 見えている → ドローン写真測量 裸地の土工・造成・ストックヤード。 最も安く、密度も十分に出る 覆われている → UAVレーザー測量 森林・法面・河川敷・急傾斜地・災害調査。 落葉期に飛べるかを併せて確認する 水部あり → グリーンレーザー測量 陸部と水部を一度に取得する いずれも不可 → 地上レーザー(TLS)等 飛ばせない現場は地上側の技術で組み立てる
Q1で判断がつく現場が実際にはいちばん多く、植生や堆積物に覆われている場合だけQ2以降を検討します。判断に迷う現場条件があれば、お問い合わせからご相談ください。

公共測量では、どちらが「原則」か

ここは誤解されやすい論点です。UAVレーザー測量は公共測量で使えますが、「原則」として位置づけられているのは写真測量のほうです。

まず制度上の整理から。UAVレーザ測量は、令和5年3月31日の改正で公共測量「作業規程の準則」の第4編(地形測量及び写真測量:三次元点群測量)第4章「UAVレーザ測量」として条文化されています。かつてのように「マニュアル(案)に基づく試行的な技術」という位置づけではありません。同じ第4編には、地上レーザ測量、UAV写真点群測量、車載写真レーザ測量、航空レーザ測量、航空レーザ測深測量が並んでいます。

そのうえで、国土交通省「UAV等を用いた公共測量実施要領」には、どの技術を選ぶかの条件がこう書かれています。

植生被覆がない、または、植生被覆が少ない時期に現場作業を実施でき、かつ、無人航空機の運航の安全確保に支障がない場合は、「UAV写真」を選定する

無人航空機の運航の安全に支障がなく、被覆植生が一定以下の場合であって、必要な精度を確保可能な機材を所有している場合は、「UAVレーザ」を選定してもよい

読み方

「UAV写真を選定する」と言い切られているのに対し、UAVレーザは「選定してもよい」です。つまり UAV写真が原則、UAVレーザは条件付きの選択肢 というのが制度の建て付けです。
そして UAVレーザを選ぶ条件には「必要な精度を確保可能な機材を所有している場合」が明示されています。機材の性能を説明できることが、そのまま発注者への説明責任になります。UAVレーザーを提案する際は、機種のスペックと実測での精度検証をセットで示すのが確実です。

なお、条文の番号は改正のたびに変わります。引用する際は条番号ではなく「準則 第4編第4章 UAVレーザ測量」のように編・章で示し、適用にあたっては最新の規程本文をご確認ください。

APEXでは、どちらも実測してお出しできます

APEXは、UAVレーザー測量・ドローン写真測量・地上レーザー・ハンディSLAMをいずれも自社で実施しています。機材を売る立場でも、計測を受託する立場でも、「その現場に必要のない方式」を勧める理由がありません。

現場条件(面積・植生・要求精度・成果品の形式・時期)をお知らせいただければ、どの方式が適切か、想定される点密度と費用レンジを添えてご回答します。実測ベースの精度検証レポートもご用意しています。

現場条件を伝えて相談する(無料)

よくある質問

写真測量とドローンレーザー測量は、どちらが精度が高いのですか?

公共工事の制度上は同等です。「3次元計測技術を用いた出来形管理の監督・検査要領(土工編)(案)」では、空中写真測量(UAV)も無人航空機搭載型レーザースキャナーも要求精度は ±50mm 以内で、優劣の区別はされていません。差が出るのは精度ではなく「地面の点を取得できるかどうか」です。

なぜ樹冠下で13mもずれるのですか?

写真測量は写真に写ったものしか三次元化できないため、植生に覆われた現場では樹冠の上面が地形面として再現されます。地面ではなく樹高ぶん高い位置に面ができるため、樹高が大きい現場ほど差が開きます。これは精度の問題ではなく、測っている対象が違うということです。

レーザーを使えば、どんな森林でも地面が取れますか?

いいえ。マルチリターンは葉のすき間を抜けた光が地面に届く現象なので、すき間がほとんどない密な常緑樹林では地面の点密度が大きく落ちます。落葉期に計測する、飛行高度と速度を落とす、点密度の高い機材を選ぶ、といった対策を組み合わせます。要求精度が厳しい場合は事前の試験計測をおすすめしています。

UAVレーザー測量は公共測量で使えますか?

使えます。UAVレーザ測量は作業規程の準則 第4編「地形測量及び写真測量(三次元点群測量)」第4章に規定されています。ただし国土交通省「UAV等を用いた公共測量実施要領」の技術選定条件では、植生被覆が少なく飛行の安全が確保できる場合は「UAV写真」を選定するのが原則で、UAVレーザは「被覆植生が一定以下で、必要な精度を確保可能な機材を所有している場合」に選定してもよい、という位置づけです。

裸地の造成現場でも、レーザーにしたほうがいいですか?

その必要はありません。地表が見えている現場では写真測量で十分な成果が得られ、費用も抑えられます。UAVレーザーを検討する価値があるのは、植生や堆積物に覆われている、影が強い、模様のない面が多い、夜間や曇天に計測したい、といった条件が加わる場合です。

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